MCDONNELL DOUGLAS MD-11
更新:2008年1月22日
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MCDONNELL DOUGLAS MD-11(JA8587) 日本航空/成田空港(畑ポイント)
中長距離路線向けジェット旅客機のベストセラーDC−10型機をベースに胴体のストレッチとハイテク技術を投入して近代化を図ったワイドボディ三発ジェット旅客機が本機、マクドネルダグラスMD−11型機です。
■開発の歴史 |
本機開発の原点は1970年代中頃から計画されていたDC−10型機の胴体延長型計画に見ることができ、DC−8/DC−9型機で需要にあわせて次々と胴体延長型を送り出してきた経験のあるマクドネルダグラス社らしく同型機も当初から40フィートまでは無理なく延長可能なように設計されていました。
しかし計画は具現化するまでにはいたらず1980年代を迎え、ボーイング社やエアバス社が2人乗務機の開発に着手したことから同社でも2人乗務に対応すると共に主翼にウィングレットを追加する等の新技術を盛り込んだMD−100型機開発計画を発表、しかしこれも航空会社の支持は得られず中止されてしまいます。
こうしてなかなか進展しなかったDC−10型機の発展改良型がようやく実現することになったのは1984年に発表されたMD−11X型機計画で検討の結果、コクピットの2人乗務化とウィングレット装着、さらに胴体は5m強延長した型を標準型とすること等で整理され1986年12月、12社から確定52機とオプション40機の注文を取付け、正式に開発に着手、1990年1月に初飛行に成功しました。
■特徴 |
本機の特徴は、DC−10型機と比較して胴体を18.6フィート(5.67m)延長したことでこれにより座席数は標準285席から321席に増加しています。また超長距離路線への投入を睨んだ同機では主翼端に巡航時の空力改善に効果をもたらすウィングレットを装着、また主翼には新素材を用いて構成しています。さらに水平尾翼は完全な新設計でコンピューター制御を取り入れ約30%小型化が図られています。
一方、コクピットは同世代の旅客機と同じようにCRTディスプレイを用いたグラスコクピットを採用、あわせて飛行全般やエンジン制御にもコンピューターを駆使した制御が行われており、乗務員の負担を軽減し2人乗務化に対応しています。
■生産と派生型 |
1990年に初飛行を果たした本機ですがその開発は予想外の自重増加や空気抵抗増加といった問題点が浮上、主翼端にまで燃料タンクを拡大するといった大がかりなものから機体外形の細かな改修まであらゆる点を検討しフィードバックして性能不足を補うように努めますがこうした計画の遅延は性能不足と相まって本機に大きな陰を落とす結果となりました。
こうした中でも床下貨物室に補助タンクを追加した航続距離延長型であるER型をはじめ、貨物混載型のC型、貨客転換型のCF型、そして貨物型のF型といった派生型が開発され少しでも受注を拡大しようとしますが、1990年代半ばに入るとエアバスA330型機やボーイング777型機といったハイテク双発機が登場、さらにこれまで三発機に有利に働いていたETOPS(Extended Twin Operations:双発機の洋上運航距離の制限)が緩和されこれらの経済性の高いハイテク機が長距離路線に就航できるようになると一気に旗色が悪くなって発注は先細り、ついに1997年マクドネルダグラス社が長年のライバルボーイング社の軍門に下るにいたり、真っ先に整理の対象となった本機は2000年に200機で生産終了となりました。MD−11型の開発の歴史とその結末は堅実な機体造りで数々の名機を生み出した名門ダグラス社の血筋が経済原理に負けた結果迎えた哀しい結末を象徴しているように思えます。
■日本のMD−11 |
日本では日本航空がDC−10型機の後継機として1990年3月にMD−11型機を10機確定発注、内訳は欧州線や北米線投入を睨んだ長距離型とアジア路線向けの中距離型各5機でエンジンはプラット&ホイットニー製<PW4660>を選定、1993年暮れに最初の機体を受領、「J−Bird」の愛称で鳥の名前が愛称に与えられることとなり以後1997年までに10機全てを受領しています。なお発注時にはさらに10機のオプションを有していましたが行使されることはありませんでした。
10機が揃いそれぞれの路線で活躍していた2000年11月、日本航空は経営方針の転換によりMD−11型機の2004年度までに売却と後継機にボーイング777−200ER型機8機と767−300ER型機3機の発注を発表、これはETOPSの緩和で航続距離が長く、長時間の洋上飛行が可能で高い経済性を誇るハイテク双発機の登場で三発機の魅力が失われてきてたため機齢が若い本機を売却して新たに双発機を購入した方が経済的という結論にいたったためで2004年度までに全機退役を決定、2004年10月12日、MD−11型機(JA8582)が運航を終え、ボーイング727型機やマクドネルダグラスDC−10型機といった日本航空における三発機運航の歴史に終止符が打たれました。
■日本で見られるMD−11 |
MD−11シリーズの旅客型はかつてはアメリカン航空をはじめ、デルタ航空、スイス航空、KLMといった北米、欧州系のエアラインをはじめ、ヴァリグブラジル航空やVASP、中国東方航空、大韓航空、エバー航空、タイ国際航空などが成田や関空に乗り入れていましたが、いずれもボーイング777型機やエアバスA340型機などに更新されたり日本路線自体がなくなるなどして姿を消し、現在旅客型を運航しているのはフィンランド航空の関空線(2008年1月現在)のみになってしまいました。
一方で貨物型としての需要は旺盛で成田や関空の常連で50機以上のMD−11を貨物機として運航しているフェデックスをはじめ、日本航空から全機を買い取り貨物型に改造するなど合計30機以上を保有するUPSが関空線に、新造最後の機体を受領したルフトハンザカーゴは成田、関空、セントレアに主力機材として日本に乗り入れています。
また航空需要の旺盛なアジア路線で中国貨運航空やエバー航空などが定期で運航している他、現在は別機材で運航中の上海航空やアエロフロートなどもMD−11型機での運航の予定があるようです。いずれにしても旅客型は風前の灯火ですが、貨物型はもうしばらく見ることが出来そうです。
初回更新:2004年10月16日
改訂:2008年1月22日
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