双発機の台頭
(1990年代のジェット旅客機)

 


 990年代の旅客機業界に大きな転機が訪れます。それが「双発機の台頭」です。

 れまでの旅客機は短・中距離路線は双発機、長距離路線は多発機という住み分けがなされていました。それは双発機の運航はエンジンが1基停止した際、決められた時間内に代替空港へ緊急着陸が可能なルートの飛行を定めたETOPS(Extended-range Twin-engine Operation Performance System)と呼ばれる規制があり、長距離の洋上飛行は事実上不可能とされていたためです。しかし、エンジンの信頼性が高まったこと、そして推力も飛躍的に向上してきたことから規制は段階的に緩和が進められ双発機の長距離路線の進出が本格化しました。

 距離路線向けとしてエアバス社が開発したのがエアバスA340型機(1991年初飛行)エアバスA330型機(1992年初飛行)です。

 れまでアメリカ勢に占有されてきた大型の長距離路線向け機材として計画された機体は操縦システムはA320で確立されたフライ・バイ・ワイヤシステム、胴体はA300の胴体径を採用、主翼は新設計のものとして、中・長距離路線向けには双発形式のA330、超長距離路線向けには四発形式のA340としてそれぞれ設計、ファミリー化を意図として当初から胴体長の長短により2タイプが開発されています。A340についてはさらに胴体長胴型や航続距離延長型も開発され差別化が図られることとなりました。

エアバス
A330−200

初飛行:1997年

エアバス
A330−300

初飛行:1992年

エアバス
A340−200

初飛行:1992年

エアバス
A340−300

初飛行:1991年

       

エアバス
A340−500

初飛行:2002年

エアバス
A340−600

初飛行:2001年

       

 
方、ボーイング社が開発したのがボーイング777型機(1994年初飛行)です。

 67と747との需要の間を埋める全く新しい機体として開発された機体には、初めてフライ・バイ・ワイヤシステムが採用され、胴体は6.2mの真円断面、エンジンにも大推力エンジンを採用した機体は標準座席数370席、航続距離7000kmという機体で高い評価を勝ち得てます。さらに胴体を10m以上延長して標準座席数を480席と空前の巨大双発機となる−300型(1997年初飛行)も登場、派生型としてさらに航続距離延長型も開発されています。

 れらの登場により多発機の独壇場であった長距離路線はより高い経済性を持つ双発機に市場を奪われることとなり、3発機として残っていたMD−11型機は2000年で生産終了、747シリーズも受注に陰りが見えるようになって新たな改良型の開発が企画されることとなりました。

ボーイング
777−200

初飛行:1994年

ボーイング
777−300

初飛行:1997年

       

 型機のベストセラー、ボーイング737のさらなる改良型として登場したのがボーイング737−700型機(1997年初飛行)です。

 ラスコクピット化されフライ・バイ・ワイヤシステムが導入されたA320シリーズの登場は既存の737の販売に大きな影を落とし、それに対抗すべく改良された機体は主翼形状を見直し操縦席のグラスコクピット化も推進、エンジンも電子制御システムを搭載するなどかなりのハイテク化が進んだ機体となりましたがフライ・バイ・ワイヤシステムについては採用されていません。このシリーズでは開発当初から需要によってファミリー化が座席数120席級から最大190席級まで4タイプが開発、このシリーズを737NG(Next-Generation)と総称しています。

ボーイング
737−600
初飛行:1998年

ボーイング
737−700
 
初飛行:1997年

ボーイング
737−800

初飛行:1997年

ボーイング
737−900
初飛行:2000年

       

 ーイング737と激しい争いを見せてきたマクドネルダグラス社もMD−80シリーズのさらなる改良型としてMD−90型機(1993年初飛行)を投入します。

 本的な外形はMD−80シリーズを踏襲しつつ、強力で経済性、静粛性能を向上させたエンジンに換装、機体構造に新素材を用いて軽量化を図り、電子機器制御を取り入れた機体でしたが、コクピットはMD−87型機ベースのグラスコクピットとしています。ただA320シリーズや737NGシリーズほど徹底したものではなく売れ行きに陰を落とすこととなりました。本機やMD−11の不振でマクドネルダグラス社の経営難に陥り、1997年、ついにボーイング社に吸収合併されることとなりました。この吸収合併により既存機と競合するMD−11やMD−90は生産打ち切りを決定、一方、MD−90の短胴型である100席級のMD−95計画は競合しないと判断され開発は続行、エンジンを換装、完全なコクピットを有するボーイング717型機(1998年初飛行)として登場します。

マクドネルダグラス
MD−90
 
初飛行:1993年

ボーイング
717

初飛行:1998年

       

 クドネルダグラス社の脱落でボーイングとエアバスの二強時代となる中、両社が生産していない分野、具体的には50席級の小型ジェット旅客機として登場したのがボンバルディアCRJ100型機(1991年初飛行)エムブラエルERJ145型機(1994年初飛行)です。


 社が開発した50席クラスの機体は元来ターボプロップ機が占める分野でしたがエンジン性能向上により運用経費が削減され、飛行時間の短縮に不可欠な高速巡航が可能な点からジェット旅客機でも対抗できる土壌ができつつありました。そこでボンバルディア社はビジネスジェットをベースに、エムブラエル社はターボプロップ旅客機をベースにしたT字尾翼にリアマウント方式の双発型式でカラーCRTで構成された電子飛行計器システムを搭載した機体で売れ行きを伸ばしていきました。

 の他、同じくターボプロップ機メーカーであったフェアチャイルド・ドルニエ社が30席クラスのドルニエ328JET型機をベースに50〜70席クラスの双発機開発に名乗りを上げ100機以上の受注を受け実機まで開発しましたが2002年に経営破綻し開発は頓挫しています。

ボンバルディア
CRJ−100
 
初飛行:1991年

エムブラエル
EBM145

初飛行:1994年

       
 


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 (2000年代以降のジェット旅客機) 


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