ジェット旅客機時代の幕開け
(1950年代のジェット旅客機)

 


 2次世界大戦を経て急速に発展したジェットエンジンですが、初期のものは非常に燃費が悪く信頼性も低かったため長距離を安全に飛ぶ必要のある旅客機には不向きと判断されプロペラ機の時代が続いていました。

 うした欠点を克服した待望のジェット旅客機として登場したのがデ・ハビランドDH−106「コメット」型機(1952年初飛行)です。プロペラ機特有の振動から開放された快適性、そして既存の機体の倍近い高速と時代の幕開けを感じさせる機体でしたが就航後わずかな期間に多くの墜落事故を引き起こして飛行停止となってしまいました。徹底した事故原因究明の結果、与圧の繰り返しによる設計以上の負荷が加わったことによる胴体の金属疲労と判明、その結果はその後に登場する旅客機の設計に生かされた他、コメット機自体も徹底的な改良を加えた機体が1958年に就航しますが、既に時代の趨勢はアメリカ勢に渡っており静かに退役していくこととなりました。

 950年代後半にはコメットの登場に刺激を受けたアメリカの航空機メーカーが次々ジェット旅客機としてボーイング707型機(1957年初飛行)ダグラスDC−8型機(1958年初飛行)コンベアCV880型機(1959年初飛行)が相次いで登場します。

 れらの機種に共通するのが「コメット」がレシプロ機の面影を残した設計だったのに対し、エンジンをポッド式に装備、座席数も100席を越え、なおかつ高速で長距離を飛ぶことができる、具体的にはレシプロ旅客機に対し2倍のスピード、2倍のペイロードの相乗効果はすなわち4倍の輸送効率を航空会社に与えることとなり、主役の座を奪うに十分な機体となったこれらの機種は本格的ジェット旅客機時代の到来を告げる機体となりました。

 空会社から「稼げる機体」と認識されたこれらの機体は瞬く間に世界を席巻、登場後もターボジェットエンジンをより燃費の良いターボファンエンジンに換装したり、需要に応じて胴体の延長に取り組むなど改良が加えられ、1960年代のジェット旅客機時代を支えることとなりました。

デ・ハビランド
DH−106コメット
初飛行:1952年

ボーイング
707
初飛行:1954年

ダグラス
DC−8
初飛行:1958年

コンベア
880
初飛行:1959年

       
 合機とは違ったアプローチを見せたのがフランスSNCASE社が開発したSE210「カラベル」型機(1955年初飛行)です。本機の特徴はエンジンを尾部にまとめる配置するリアマウント式に装備したことで、さらに短・中距離路線向けの機体として開発されたのも本機が最初です。機首はコメットのものを採用するなどエンジンや部品などに海外製部品を多く導入したのも特徴であり、その後登場する第2世代のジェット旅客機開発に大きな影響を及ぼした機体です。

 方、コメットが短命に終わったイギリスの航空機メーカーもアメリカ勢の市場独占を許すまいとして意欲作ヴィッカースVC−10型機(1962年初飛行)を世に送り出します。この機体の特徴はカラベルと同様、尾部に4発のエンジンをリアマウント方式で装備することにより、十分な高揚力装置を装備して高い離発着性能を持たせることを主眼においていましたが、開発に手間取り、登場した時には既にアメリカ勢が市場を席巻しており、その牙城を崩すには至らずに終わっています。

 戦の東西対立下においてコメットの挫折とアメリカ勢の台頭の間隙を縫って登場したのがソ連のツポレフTu−104型機(1955年初飛行)です。もっとも開発期間を短縮するためにジェット爆撃機Tu−16の胴体を再設計した機体だったためお世辞にも経済的とは言えない機体ではありましたが、曲がりなりにもコメットが再就航する1958年まで唯一の「ジェット旅客機」として飛び続け、その登場は西側諸国に大きな衝撃を与えることになりました。

 の後、長距離路線向けにVC−10に似たイリューシンIl−62型機(1963年初飛行)を登場させますがこの機体も外見はともかく安全性や快適性、電子装備や客室内装などは西側の機体に遅れが見られる機体ではありましたが東側にもジェット旅客機の時代を呼び込むこととなりました。

ツポレフ
Tu−104
初飛行:1955年

シュドアビシオン
SE210カラベル
初飛行:1955年

ヴィッカース
VC−10
初飛行:1962年

イリューシン
Il−62
初飛行:1963年

       
   


ジェット旅客機のあゆみ

 

 


短・中距離路線のジェット化
 (1960年代のジェット旅客機)


このページは「旅客機博物館セブンティカラーズ」の一部です。
/////2009.9.5改訂/////

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