日本航空機製造 YS−11
NAMC YS-11
公開:2004年 6月12日
改訂:2006年 7月25日


NAMC YS-11A-500(JA8766)
日本エアコミューター
2006.6.11 鹿児島空港(展望デッキ)


 第二次世界大戦後、日本が唯一独自で開発・生産した国産旅客機で初飛行から40年を迎えてなお飛び続ける双発ターボプロップ旅客機が本機、日本航空機製造YS−11型機です。

■開発の歴史

 前から戦中にかけて技術水準の面で先進国に優るとも劣らぬレベルに達した日本の航空機産業でしたが、敗戦に伴い連合軍から一切の航空活動が禁止され、一旦は完全に国産機開発の途が途絶えてしまいました。1952年になって航空機産業の再興が解禁されましたが、進歩の早い航空界で7年間のブランクはあまりにも大きく、技術開発の遅れを取り戻す意味からも1955年頃から国産旅客機開発計画の機運が高まりました。

 画は徐々に具体化、1957年には国からの補助金を受けて国産旅客機開発の基礎研究を行う組織として輸送機設計研究協会が設立され、多くの案が検討される中、この計画は「輸送機設計研究会(Yusoki Sekkei)」の頭文字から「YS」、そして協会が「候補に上げた1番目のエンジン」を積んだ、「1番目の主翼設計」を採用した機体ということから「YS−11」と名付けられ、最終的には座席数60席級の双発ターボプロップ旅客機、という仕様固まりました。

 959年には同協会を母体に政府と民間各社が共同出資する「日本航空機製造株式会社」が設立され、本格的な開発に着手、日本の航空機産業の総力を結集した開発には「航研機」や「A26」を開発に携わった木村秀政博士をはじめ、「零戦」の堀越二郎技師、「紫電改」の菊原静夫技師、「飛燕」の土井武夫技師等、戦前から戦中に航空機開発に携わった代表的な設計陣が加わっての開発となり、1962年8月に原型機が初飛行しました。

■特徴

 機の特徴は、まず外観的には横4列のほっそりとした胴体に、アスペクト比の高い、テーパーされた主翼を組み合わせたものでこれらは戦前、戦時中に活躍した旧日本軍機の面影を色濃く残りしています。
 さらに性能的には日本の航空事情とこれからの発達を見越して

(1)ローカル線の機材としては大型といえる60席以上の座席数確保
(2)22.5t以上の最大離陸重量
(3)1200m級の滑走路から離発着が可能

という性能を満たしていることです。
 これらの性能を満たし、なおかつ信頼性を高めるためにエンジンは国産エンジンを採用することを諦め、既に実績のあったロールスロイス社製の<ダート>エンジンを採用するなど国産機ではありながら、外国製部品を多く取り入れ、口の悪い人は「半国産機」とまで称しましたが、高い信頼性をもたらすこととなります。

 後初の旅客機としてほぼ「ゼロ」からの開発だけに初飛行後も問題が山積、舵をはじめ地上でのハンドリングなどで大幅な改修が必要となり、その期間は実に2年に及びました。また強度面でも十分以上の強度を持たせており、これらは実際に飛ばしている操縦士や整備員が本機を評して「丈夫すぎるぐらい丈夫」と言い、製造から40年以上経過してもなお活躍を続けているのはその証拠と言えますし、ある面では過剰品質であったとの批判もあります。

■生産と派生型

 ビューを果たした本機は、航続力にやや不満があったものの、性能、空力特性、信頼性、ハンドリング性など総合的にバランスのとれた優れていて評価も高く、日本の航空会社はもちろんのこと、ペイロードを増したA型が発表された頃からは海外への販売も本格化、大量25機を導入したアメリカのピートモンド航空のをはじめ、ブラジルのVASPやクルゼイロ、ギリシャのオリンピック航空、フィリピンのフィリピン航空などで導入されました。
 しかし、性能の優秀さとは裏腹に販売計画の甘さが露呈、初の日本製ということで価格面で足下を見られ原価を割る価格で販売することもあって「売れれば売れるほど赤字が増える」という機体になってしまい、国内需要も一息つき、急速な円高で海外への販売も難しくなってきたこと、さらにそれに伴う赤字を国会で追求された「日本輸送機製造」の出資者である国が決断し1972年、182機で生産終了となりました。

 産は標準型で座席数60席、最大離陸重量23.5トンで49機が生産された100型、最大離陸重量を24.5tと増やすために各所に改修を加えたA型となって以降は、純旅客型で生産機数が最も多い101機が生産されたA−200型、23機が生産された貨客混載型のA−300型があり、貨物専用型として自衛隊向けに8機が生産されたA−400型、さらに離陸重量を増やした輸出仕様の純旅客型のA−500型(4機)と貨客混載型のA−600型(9機)などがあります。さらにA−400型をベースに離陸重量を増やしたA−700型というタイプも計画されますがこちらは計画のみに終わりました。ちなみにA−200型として生産された多くの機体は改修を受け、A−500型に改造されており、現在日本エアコミューターで運航されている機体もすべてそのタイプに当たります。

 の他、最近よく話題に上るのが幻のジェット機化計画で「YS−11J」と呼ばれた計画機は全長を3mほど延長して座席数を70席級とし、機体を大幅に変更することなくジェットエンジンを搭載するため、エンジンを主翼上面に搭載する方法を採用、これはドイツのVFW614型機で採用されたものと同じ構造でした。1972年、国の「YS−11」生産終了決定と同時に計画も放棄されました。
 ちなみにVFW614型機が特異なエンジン搭載方法を採用した理由はエンジン騒音の地上への拡散が防がれる他、未舗装滑走路での異物吸入の防止につながるということでしたが、実際に飛ばしてみるとエンジンの整備など問題が多く、座席数がわずか44席と小さすぎたこともありわずか16機しか売れず、その後この方式を採用した機体は搭乗していません。

■日本のわいえす

 在、経年化に加え、装備に大規模な改修と費用を要するTCAS(航空機衝突防止装置)の装備が義務づけられたことから旅客機としてはエアーニッポンが2003年までに退役を終了、日本エアコミューターも猶予期間の切れる2006年度、2006年9月30日に退役させることを発表、現在は3機の体制で福岡、鹿児島を拠点に最後の活躍を続けています。

 方、TCAS装備が義務づけられない自衛隊の機体については現在も現役で運用されており、航空自衛隊ではC−1型輸送機導入までのつなぎとして13機(人員輸送型(P型)4機、人員貨物輸送兼用型(PC型)1機、貨物輸送型(C型)7機、飛行点検機型(FC型)1機)を導入しましたが、C−1型機導入の本格化により、別用途への改造が進み、現在はP型3機、FC型3機、電子測定機型(EB型)4機、電子戦訓練支援機型(EA型)2機、航法訓練機型(NT型)1機の陣容で運用されています。
 海上自衛隊でも米軍から供与を受けたR4D輸送機の置換え用ならびに対潜哨戒機のクルー育成用の機上作業練習機として本機を10機導入、輸送機型(M/M−A型)4機と機上作戦練習機型(T−A型)6機が現役として運用されています。

 の他、官庁関係として海上保安庁が基地から遠い海域での海難事件に対応する長距離捜索救難機として本機を2機導入したほか、1970年代後半には全日空から3機の中古機を購入、海上保安庁仕様に改造し沖縄と北海道に配備、運用が続けられています。

 た、運輸省(現国土交通省)航空局も航空保安施設の飛行検査機として4機を導入、さらに東亜国内航空から中古機1機を導入しましたが、老朽化によりボンバルディアBD700型機やガルフストリーム型機、サーブ2000型機と交代する形で4機が現役を退き、現在は2機が運用されています。ちなみに引退した機体のうち1機が国立科学博物館の手で動態保存されています。

日本航空機製造 YS−11 諸元
日本エアコミューター YS−11A−500
項目 データ
全長:32.00m
全幅:26.30m
全高:8.99m
最大離陸重量:25.0t
エンジン:ロールスロイス<ダート>MK542−10J/K
3060馬力×2基
巡航速度:444km
航続距離:1110km
乗員/乗客:2人/64人
展示室
当館で展示しておりますYS−11型機についてご案内しております。
日本エアコミューター
3機運航中(1988〜2006予)

日本エアコミューター
YS-11A-500(JA8768)
2005.11.5 福岡

日本エアコミューター
YS-11A-500(JA8717)
2006.6.11 鹿児島
ありがとう日本の翼YS−11塗装
エアーニッポン
全機退役済(1978〜2003)

エアーニッポン
YS-11A-500R(JA8735)
2002.12.8 羽田
ノータイトル

エアーニッポン
YS-11A-500R(JA8735)
2006.6.17 所沢航空発祥記念館
展示保存機
航空自衛隊
13機運航中(1965〜)

航空自衛隊
YS-11FC(12-1160)
2005.8.20 横田

航空自衛隊
YS-11P(52-1152)
2006.5.28 美保

航空自衛隊
YS-11NT(92-1156)
2006.5.28 美保
  
海上自衛隊
10機運航中(1967〜)

海上自衛隊
YS-11M(61-9041)
2004.5.9 厚木

海上自衛隊
YS-11T-A(6906)
2005.5.29 下総
国土交通省航空局
2機運航中(1968〜)
海上保安庁
5機運航中(1969〜)

国土交通省航空局
YS-11-118(JA8717)
2005.9.11 羽田

海上保安庁
YS-11A-207(JA8701)
2005.11.7 鹿児島


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